キャンプギアの中でも多くの選択肢があり、好みや個性を発揮できるのがクッカー。「キャンプ=料理」と捉えているキャンパーは多く、料理の種類やキャンプの人数によっても多くの選択肢があります。そんな中で、私は当然「ソロキャンプ」のためのクッカーを探すことにしました。
ソロキャンプ用のクッカーは、なにしろひとり分の調理ができればいいだけなので、小さくてかまいません。もし私が登山家なら、ここに「軽い」や「コンパクト」などの条件がプラスされますが、今のところ私は登山キャンプはやっていないので、かなり広い選択肢の中から選ぶことができました。
現在私はいくつかのクッカーを所有していますが、その中で最も特殊なクッカーがこの「戦闘飯盒2型」です。今回はMOOSE ROOM WORKS(ムースルームワークス)さんの「戦闘飯盒2型」を紹介したいと思います。
「MOOSE ROOM WORKS」ってどんなブランド?
「MOOSE ROOM WORKS(ムースルームワークス」)さんは、2018年に日本の北海道・札幌で立ち上がったガレージブランド。幼少期に過ごしたアウトドアでの遊びを思い出し、「自分だけの有意義な時間を」というコンセプトにもとづいて、自分が考えたキャンプギアを使ってキャンプをしたい、という思いでモノ作りを展開しています。言わば、ひとりのキャンパーの夢を具現化したブランド。テントやタープ、焚火台やクッカーなどを展開しています。
ちなみにブランド名の「MOOSE」はヘラジカのこと。世界最大の鹿であり、その象徴とも言える大きなツノがブランドロゴにも使われています。うーん、カッコいい!
「戦闘飯盒2型」ってどんなクッカー?
まず「戦闘飯盒2型」という製品名に驚く方は多いと思います。キャンプというアウトドアレジャーからは、その関連も想像しにくい「戦闘」というワード。これは、このクッカーが軍由来のものであることを意味しています。
そもそも「飯盒」とは野外の調理で使用する携帯用の炊飯器であり食器なのですが、これは戦場における兵士たちが使用したことが始まりです。それこそ兵士たちにとって、野営は日常茶飯事。英語では「MESSTIN(メスティン)」と呼ばれ、これは現在でもアウトドア用クッカーに製品名として残っていますよね。
この「戦闘飯盒2型」はかつて日本の自衛隊で採用されていた飯盒であり、現職の自衛官も使用されていた方は多いと思われます。この官給品が市場に出回り、キャンプで使われ始めたところ、その無骨なデザインもさることながら、クッカーとしての機能性も高かったことから大人気となりました。私が敬愛するキャンプ芸人のヒロシさんも愛用し、ご自身のYouTube動画で紹介されています。
1台でさまざまな使い道があるクッカー!
飯盒と言えば「兵式飯ごう」と呼ばれる、もう少し大型のものを思い浮かべる方も多いと思いますが、そちらは4号炊き。ソロキャンプで使うには少し大きい上に、底が深い形状になっているため、底にこびりついたおこげなどが洗いにくいという欠点がありました。この「戦闘飯盒2型」は2号炊きというソロキャンプにぴったりなサイズと、底が浅いために簡単に手が届いて洗いやすいという長所があります。
また中子は取り皿として、さらに上蓋は取っ手を伸ばして簡易フライパンとしても使用することができます。ご飯を炊いて、おかずを作って、それを取り分けて食べることができる。クッカーとして求められる機能性を、このコンパクトなサイズですべて備えている「戦闘飯盒2型」はすごい!
実際に自衛官の方々が使用するときは、「戦闘飯盒2型」を取り皿として使うことが多かったようですね。立ったまま食事をすることもあるという自衛官にとっては、片手で2種類の料理を持つことができるのは便利です。
ソロキャンプには最適な2号炊きサイズとなる飯盒本体。内側には2号のお米を炊くときの、水の量がわかるラインが入っているので便利です。ちなみに私は、ご飯は固めが好みです笑
実際に使ってみるとわかるのですが、この戦闘飯盒2型の吊り手は少し長いんですよね。これがバックパックへの収納時には邪魔になります。そこでMOOSE ROOM WORKSさんの製品には吊り手のショートバージョンも付属しています。多少の使いにくさに目を瞑ってオリジナル仕様で使うもよし、使いやすさと収納しやすさに優れるショート仕様で使うもよし。ただ、付け替えは吊り手のジョイント部分を曲げておこなう必要があるので、キャンプ場で付け替えるのは難しいと思いますのでご注意です。
「戦闘飯盒2型」を手に入れるためには?
自衛隊で近年まで実際に使用されていた「戦闘飯盒2型」。このMOOSE ROOM WORKS製を含め、2022年5月現在は3社から発売されています。「ROTHCO(ロスコ)」製のものと「EVERNEW(エバニュー)」製も選択肢になります。
この2社とMOOSE ROOM WORKS製「戦闘飯盒2型」の違いは以下の通りです。
MOOSE ROOM WORKS製 | ROTHCO・EVERNEW製 |
---|---|
OD色・シルバーの2色展開 | OD色・シルバーの2色展開(ROTHCO) シルバーのみ(EVERNEW) |
ベトナム製 | 日本製 |
ショート吊り手付き | ショート吊り手別売(ROTHCO) ショート吊り手あり(EVERNEW) |
メーカーロゴなし | メーカーロゴあり |
価格6,890〜7,200円(税込) | 85,80円(税込、ROTHCO) 12,100円(税込、EVERNEW) |
その違いは価格と生産国、そしてショートバージョンの吊り手が付属するかどうかです。価格はMOOSE ROOM WORKS製が最も安く、しかもROTHCO製はショート吊り手が別売り(605円、税込)なので、ショート仕様で使いたい場合はさらに広がることになります。
また生産国ですが、一見、日本製の方がよりオリジナルに近いように思えます。しかし、実際に自衛隊が使っていた「戦闘飯盒2型」は、日本製とベトナム製の2種類があったようです。MOOSE ROOM WORKS製はベトナム製ですが、なんと自衛隊の官給品と同じ製造会社に依頼し、当時の工場で当時の金型や治具を使って製造しています。「防衛省自衛隊仕様完全復刻」を銘打つだけあって、すごいこだわりですね!
さらにマニアな方々なら、もう一つの選択肢に気づくことでしょう。そう、「官給品」そのものを手に入れるという方法です。この「官給品」には自衛隊が使っている製品であることを示す「桜刻印」が入っており、これはレプリカが決して再現することはできないディテールです。やはり「本物」を使いたい、という方は多いのではないでしょうか。もちろん、私もそう考えたひとりです笑
しかし! この「官給品」は正規で購入するルートがなく、現在は個人売買によって手に入れるしかありません。これが現在ネットオークションやフリマアプリでは、3万円以上の値がつく高騰ぶりを見せています。もちろん中古品での価格なので、この金額を出すのはさすがに躊躇してしまった私です。。。
さて、あとはOD色とシルバーのどちらを選ぶかですね。私がOD色を選んだのは、やはりオリジナルに近い仕様であることが理由です。シルバーも新鮮でよいのですが、私はガンガンに使って塗装がはげてしまった、使い古したオリジナルの雰囲気を早く出したいと思っています。この塗装の落ちやすさも、あえてメーカーさんが当時の製品に近いように作った部分なので、それを存分に味わいたいと思ったわけです。早く野に持ち出して、ヒロシさんの真似をしてモツ鍋をしたいですね!
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