ソロキャンプをはじめる決心をして、ついにキャンプ場へやってきた私。今回はソロキャンプのためのリハーサルとして、後ほど友人で経験者のセキくんと合流予定です。
しかし、ただキャンプ場に来てテントを張るだけでも降って沸いた誤算の数々。
そこまでの奮闘の様子は、ぜひ前回の記事をご覧ください。
さて、予定から大幅に遅れ、またスタミナの消耗も激しい私でしたが、なんとか無事にテントの設営までこぎつけました。次はこのキャンプ最大の楽しみである、「焚き火」の準備ですね!
薪割りをしよう!
憧れのヒロシ先輩ならきっと、ここで落ちている枝を探しに森に入っていくことでしょう。しかし私は初心者の身。しっかり分をわきまえている私は、キャンプ場の受付でちゃんと薪を購入してきました。
「姫木平ホワイトバーチキャンプフィールド」では、薪は500円(安い! 2021年8月の価格)で、渡されたカゴに入れ放題です。薪には針葉樹と広葉樹の2種類があり、針葉樹は「火がつきやすくて燃え尽きるのが早く」、広葉樹は「なかなか火がつかないけれど長く燃える」という特徴があるようです。なので針葉樹は焚き火の序盤に、広葉樹は後半に投入するのがいいですね。
左が針葉樹の薪で、右が広葉樹の薪です。なんとなく広葉樹の方が詰まっていて、硬そうですよね。もちろん私に2種類の薪を見極める目などあるはずもなく、なんとなく2種類の薪を均等にカゴに詰めました。結構な重さになるので、オートサイトの場合は受付時に購入してクルマで運ぶのがオススメです。
さあ、薪は用意しました。でもこのままでは使えないですね。薪割りをして細くすることが必要です。太い薪を燃やすには強い火力が必要なので、まずは「焚き付け」と呼ばれる燃えやすいものに火をつけてから細い薪に火を移し、火が大きくなったら段々と太い薪に火をつけていく、「火を育てる」という作業が必要です。これがまさにクルマのマニュアルシフトにおける、シフトチェンジのよう。停車状態からいきなり5速に入れてもクルマは動かないのと同様に、いきなり太い薪に火をつけるのは至難の技なのです! だからしっかり薪割りをして、細い薪から太い薪まで、グラデーションのように揃えることが重要なのです。
薪割りに最適なのは斧か鉈か?
薪割りに必要な刃物には、大きく分けて3つあります。斧と鉈、そしてナイフです。ナイフでおこなう薪割りは「バトニング」と言って、比較的細い薪や枝を割るのが得意です。なので太い薪を割るには、斧や鉈を使う人が多いです。では斧と鉈のどちらが薪割りに適しているのでしょうか。
などと問題提議しておきながら、まことに申し訳ないことに、私は斧一択で考えています。なぜかと言いますと、私が大好きな海外のブッシュクラフト系YouTuber、Bertram-NielsenさんのYouTubeチャンネル『Bertram – Craft and Wilderness』で、彼の見事な斧使いのスキルに惚れてしまったからです。彼は斧一本を使って、それこそシェルターから木製のスプーンまで削り出してしまうという方です。あんなスキルを私も身につけたい! と考えて、斧を購入しました。もちろん今後、鉈を購入することもあるかもしれませんが、がんばって斧を使えるようになりたいと思います!
薪割りに最適な道具は斧か鉈か、これはいずれ検証したいと思います。ですが、私は何より「自分が何を使いたいか」が重要だと思っています。ひょっとしたら斧より鉈の方が薪割りに適しているのかもしれません。でも、多少使いにくくても自分が憧れた道具を使う。その道具を使いこなすために練習する。これもひとつの楽しみではないかと思うのです。
薪割りは危険がいっぱい!
さて、薪は購入しました。斧も待ってきています。あとは薪を割るだけですね。映画やドラマで、薪割りのシーンをご覧になったことがある方は多いと思います。実際に私が薪割りをしてみた感想は「あんなに簡単そうに割っていたのに、とても難しい!」というものでした。
まず思ったよりも薪は硬くて重く、また斧もかなりの重さです。木の棒の先に小さなダンベルを取り付けて振り回すようなもの。しかも手にしただけで、これは使い方を間違うと大怪我をするだろうという危険なオーラに満ちていました。
この初めての薪割りの模様はいずれ詳しく書かせていただきますが、結果からいうとかなりの重労働で、汗だくで右の小指を骨折しながらの作業となりました・・・。あまりに硬くて割るのを断念した薪も何本かありました。これ以降のキャンプは、右小指の激痛とともに過ごすことになってしまったのでした。
焚き火をしよう!
私がキャンプに挑戦しようと思ったのは、この「焚き火」がしたかったからです。「1/fのゆらぎ」という、炎の色や光、薪や燃える音や周波数がもたらすといわれているリラックス効果。ゆったりした気持ちで炎と火の粉を眺め、お腹が空いたら肉を焼き、火で温められた体に冷えたビールののどごしを楽しむ。自分ひとりで薪をいじり、飽きるか、薪が燃え尽きたらやめる。そんな時間を過ごしたくて、いろいろな準備をしてきたのです。薪割りで怪我した小指はたしかに痛かったのですが、そこにはもう、ワクワクしかありませんでした。
直火ができるキャンプ場は少ない!
「姫木平ホワイトバーチキャンプフィールド」は、直火での焚き火を禁止しています。「直火」とは、地面の上に直接薪を組んで焚き火をすること。焚き火のあとに残る炭は炭素であり、地中に埋めたとしても分解されずに、そのままの形で残されてしまうのです。ですので、直火を禁止しているキャンプ場では、必ず「焚き火台」や「バーベキューコンロ」などの器具を使って、地面にダメージを与えないようにしましょう。
憧れのピコグリル登場!
さて、その焚き火台ですが、もちろん準備していました。むしろ直火ができるキャンプ場の方が少ないので、キャンプに焚き火台は必須のアイテムといって間違いないでしょう。私が選んだのは当然、憧れのヒロシ先輩がベストの焚き火台といい切っている「ピコグリル」です。
ピコグリルはA4サイズに折り畳むことができる、スイス「STC」社の軽量コンパクトな焚き火台。材質はステンレスで、専用の収納ケースがついて、それ込みでも約450gという軽さ。スリットが入った独自の形状による高い燃焼性を誇っています。ヒロシさんが愛用していることで、一時は価格が高騰しました。
設置はフレームを広げて台を取り付けるだけ。スリットから灰が落ちるので、この日は下にアルミホイルを敷きました。ドキドキしながら、焚き付けによいと聞いていた木の皮にライターで火をつけ、おそるおそるピコグリルの上に。チリチリと音を立てて小さな炎をあげていましたが、なんとすぐに消えてしまいました。
「えっ、ヒロシさんは木の皮だけで簡単に火をつけていたのに!」
しかし、何度試みても、火はすぐに消えてしまいます。「火をつけるってこんなに難しいの!?」。友人たちとしたバーベキューでも、そこら辺は任せきりだった私。いざ自分でやってみると、木の皮にも小さな枝にも、全然火がつかないのです。正直、これには驚きました。
焚き火ができないなんて、最大の誤算です。このとき私は、最悪の場合はパンだけ食べて寝ることを覚悟したのでした。
友人セキくんの活躍
薪を用意し、ピコグリルを広げ、火がつかない焚き付け用の木の皮を前に途方にくれる私。そんなとき、「できた?」の声とともに現れたのがセキくんでした。
彼は10年ほど前、急に神奈川県から長野県に移住した友人。自然が好きとはまったく知らなかったのですが、若くして自然に囲まれた人生を選択した人です。
そんな彼の手にかかれば、私があんなに苦戦していた薪割りもとってもスピーディ。「いい斧買ったじゃん」と言いながら、私がさっきまで「これ全然切れない」と嘆いていた斧で、カンカンと薪を割っていきます。なんでも薪を割るには薪の目にそって刃をいれることが大事だそうで、私がギブアップした硬い薪も一太刀で割っていくのです。いやあ、カッコいい!
「ウチ、薪ストーブあるからね」と言いながら残った薪をすべて割り、さらには「これ食べてもらおうと思って」と言いながら、見事な牛肉を取り出します。なんでも地元の友人が育てている牛だそうで、私のために分けてもらいにいってくれたそうです。
スーパーで買ったステーキ肉があったのですが、それは持ち帰ることに決定。セキくんは私がどうがんばっても火がつかなかった焚き火も、アッという間に火を起こしてしまいます。この焚き火の炎で、セキくんが持ってきてくれた肉を焼いて食べました。
これが、私にとってはじめてのキャンプ飯。標高1300mの高地で、友人に起こしてもらった焚き火で焼いた肉の旨さといったら。ただ塩をふって焼いただけなのに、確実に人生トップクラスの焼肉でした。
缶ビールをあけて、ひとしきり近況報告をしあって昔話に花を咲かせる。まさか新しい趣味として選んだキャンプが、古い友人との再会を実現してくれるなんて思っていませんでした。
そしてひとりのキャンプ
すっかり夜もふけ、「そろそろソロキャンにしてあげるよ」といって引き上げるセキくん。彼が帰ったあと、焚き火に残った薪をくべながら、ひとりビールを飲む。「この時間のためにいろんな準備をしてきたんだよなぁ」と思うと感慨深いものがありましたが、同時にすこしだけ悔しい気持ちがわいてきます。次こそは、自分でうまく薪割りをして、火を起こしてみたい。今回、この焚き火は自分では起こすことができなかったけれど、セキくんが火を起こすのをずっと見ていて、なんとなくコツがわかったような気がしました。
その後初めてひとりでテントの中で寝ましたが、とても寝づらくて夜中に何度も目が覚めました。明るくなってきた朝5時ころにテントを抜け出し、まだ他のキャンパーさんが寝静まっている中を歩きました。トイレにいこうと思ったのですが、ふと、近くで動物のような足音が聞こえました。姿を見ることはできなかったのですが、たぶん、鹿だったのだろうと思います。いつも生活している街ではなく、自分が自然の中にお邪魔しているんだということを再確認し、少し怖かったけれども、ワクワクもしました。
今回はソロキャンプの予行練習。多くの誤算があり、同時に多くの学びがありました。テントの撤収作業は設営よりも大変で、すべてをクルマに積み込んだときにはすでにヘトヘト。予定よりもかなり早く、逃げるようにキャンプ場を後にした私は、正直「これがキャンプなのか。とても疲れた」と思っていました。夜中に何度も起きて寝不足だったこともあり、早く自宅に帰って、お風呂に入ってベッドで寝たい。
ひとつもうまくいかなかった初めてのキャンプ。
「本当に2回目はあるんだろうか」
そう思いながらクルマを走らせる、帰りの3時間半。痛む小指を見ながら、私は「もう一度だけ。本当のソロキャンに、一度だけはいってみよう」と思っていたのでした。
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