「クルマで移動するオートキャンプなら、バックパックは必要なくない?」
そんな至極真っ当な意見に、私は真っ向からこう申し上げたい。「だってバックパック、カッコいいじゃないですか!」と。
ちょっと締まらない感じで始まった今回の企画ですが、これはウンウンと頷いてくれる方が多いのではないかと自負しています。たしかにクルマでの移動ならばわざわざ荷物を背負うことなく、コンテナなどにキャンプ道具を入れて持ってくれば、キャンプ中に荷物を探したり取り出したり、収納して撤収するところまで、とてもラクになると思います。
しかし! すべてを効率的に考えるなら、そもそも暑い日や寒い日になぜキャンプに来るのかという話になりますし、「キャンプは不便を楽しむ」という先人のありがたい言葉もあるのです!
・・・。そうです、どう言い訳をしても、ただカッコいいバックパックに荷物を詰めて、木の根元にドカッと置きたいだけです。すいません。でもでも、キャンプ道具がいざと言うときに防災グッズとなり得ることを考えれば、持ち出しやすいバックパックにまとめておくことは意味があると思います。
と言うわけではじまった私のバックパック探しですが、いつものようにワクワクとスマホをいじっていますと、とんでもなく高価なバックパックが登場したのです。それは「FrostRiver(フロストリバー)」というブランドの「ブッシュクラフトパック」です。お値段、なんと97,240円(税込。2022年4月現在)です!
「FrostRiver(フロストリバー)」ってどんなブランド?
「FrostRiver(フロストリバー)」はアメリカのミネソタ州北東部、ダルースに本拠地を構えるアウトドアブランド。ダルースは世界有数の鉄山であるメサビ鉄山で採掘される鉄鉱石を積み込む港湾都市であり、世界的なミュージシャン、ボブ・ディランの生地としても有名です。
ゴールドラッシュの時代に鉱山で働く男たちのために、キャンバスとレザーをリベット打ちした頑強なバッグが数多く生産された町でもあるダルース。フロストリバーはそんなゴールドラッシュの時代から受け継がれたバッグの技術や素材を駆使して、アウトドア用品を作るブランドなのです。
フロストリバーのバッグは選び抜かれた一流の素材を、職人がハンドメイドで製作。「フェアフィールドテキストスタイル」社製のワックスキャンバスや、「ソリッドブラス」社製のバックルやスナップ、スライダー、そしてレザーは有名ワークブーツメーカーでも使用されている「SBフットタンニング」社製のものを採用するなど、その素材選びには妥協が見当たりません。
余計な装飾を一切廃し、ストイックなまでに丈夫に作られた手作りのバックパック。それがフロストリバーの「ブッシュクラフトパック」だったのです。
フロストリバー「ブッシュクラフトパック」とはどんな鞄?
この、とにかく高価なバックパック。私はこれがとても気になりました。なぜこんなにも強気な価格なのか、自分の目で確かめたくなったのです。前出の価格は日本の正規取扱店でのもの。なんとかもう少し安価に手に入れられないものかと、フリマアプリやオークションサイトをチェックする私でしたが、そこで1回使用したのみという中古品を探し当てました。中古品ということは一点物なので、迷っている時間はありません。多少安い価格での出品ではありますが、まだまだ高価なバックパック。勇気を振り絞ってポチってしまいました。
さて、無事に私の家に届いたフロストリバー「ブッシュクラフトパック」。ちなみにこのバックパックは3つのサイズがありますが、私が購入したのは約30リットルのMサイズ。Lサイズはさらに高価なので、とても手が届きませんでしたし、このくらいのサイズの方が扱いやすいのでは、ということで決めました。箱を開けて取り出したこのバッグは、「タイムスリップでもしてきたの?」というくらいヴィンテージ感を漂わせる、存在感たっぷりの重厚な鞄でした。
キャンバスと革、そして真鍮のバックパック
素材は布地にオイルを染み込ませたワックスキャンバス。これは生地に防水性を持たせるための加工で、とてもクラシックな手法ながら、とても効果が高いものです。このワックスは使っているうちに取れていくので、フロストリバーでは定期的なワックスの塗布を推奨しています。このワックスは日本の正規取扱店で買えるようですね。
フロントの大きなフラップには真鍮製のDリングがあり、ここに別売りのレザーストラップを通すことでブランケットやマットなどを取り付けることができます。ブランドロゴが型押しされたレザーパッチもレトロでいい雰囲気ですね。
また、この別売りのレザーストラップはボトム部分に取り付けることも可能。レザー製のピッケルホルダー(通称:ブタ鼻)が装備されているので、上部と同じくブランケットやマット、この底部はもう少し重いテントやシュラフなども取り付けることができそうですね。30リットルという容量に少し不安を感じていましたが、これなら荷物が少し多いときも対応できそうです。
とにかく丁寧で頑丈な作り込みに感動!
このフロストリバーのバックパックは、海外の多くのブッシュクラフターたちが愛用しています。彼らはその魅力を、この無骨なデザインと、ひたすら頑丈な作り込みであると語っています。私も手にした瞬間、そのずっしりとした重厚感に驚き、また一切の媚びを感じないデザインに感心しました。このブランドの職人たちは、このバッグの機能性と耐久性にしか関心がないように思えるほどです。
使用される革はワークブーツにも使われるほど上質で厚手のもの。しかしショルダーストラップなど、人間が触れる部分には柔らかい革を当てて、肩への食い込みによる負荷を軽減してくれています。
また各パーツのバッグへの取り付けは、真鍮製のリベットでガツンと接合されており、これが壊れるという事態はちょっと想像できないくらいタフな作りになっています。
ショルダーストラップ同士を繋げると、ストラップが肩から外れることなく安定するので負担が軽減されます。そんなジョイントストラップも革と真鍮製のパーツで頑丈に作られています。ちょっとやりすぎなほどに耐久性を上げていますが、このバッグはユーザーが自然の中で生き延びるために必要な道具を守り、持ち運ぶためにある。そう考えれば、ここまで真剣に丈夫さを追求してくれていることに、「このバッグを使う人を守る」という強い意志を感じます。
ブッシュクラフト用バックパックの機能性
このリュックはブッシュクラフト用と銘打っています。なので登山用のリュックとはひと味違う機能性を持っています。まずフロントに並ぶ大きめのポケットは縦長の形状で、長めの道具がすっぽり入ります。私はナルゲンのステンレスボトルとガスのCB缶を入れていますね。しかもこの2つのポケット、奥に隠しポケットとでも言うべき細長いポケットが隠れています。私はここに折込鋸と、くるくると丸めたウォーターパックを入れています。そうそう、ここにペグを入れておくのもいいかもしれませんね。
また特徴的なのが、その2つのポケットに挟まれた細長いスリーブ。ここには斧を挿して持ち歩くことができます。斧の刃はフラップで隠せますので、雨が降っても濡れることがないので安心。ブッシュクラフトには欠かせないアイテムを、すぐ取り出せる位置に収納できるのは便利です。
両サイドには、まず下部にサイドポケットを備え、その上はDリングにジグザグに渡したコードが装備されています。ここには長尺ですぐに取り出したいもの、私はナイフやペグを入れたりしています。また、バックパックのサイズを調節できる革ベルトも付いていますので、ここにもカラビナなどを引っ掛けることが可能。私は片方に大きめのカラビナにパラコードを数セット引っ掛け、もう片方にはレザーグローブを下げています。
ここは使う人によって、使い方に工夫が出る部分。小型のポーチなども取り付けることができるので、本体の収納力に不足を感じる方は、容量アップに利用してもいいでしょう。
FrostRiver「ブッシュクラフトパック」のまとめ
このバックパックを語る上で、一番最初に考えなければならないのは価格かと思います。その他の選択肢となるバックパックに比べ、あまりにも高価。この金額を出すことができる方は、そう多くないかもしれません。
しかし、製品として見れば、アウトドアレジャーの本場で作られたブッシュクラフト専用バックパックというコンセプトを見事に体現した、とてもクオリティの高い鞄であることは事実です。現に、海外の多くの有名ブッシュクラフターが愛用し、YouTubeで紹介しています。
このバックパックの特徴をまとめてみます。
ブッシュクラフトパックの長所 | ブッシュクラフトパックの短所 |
---|---|
18オンスキャンバス製でとても丈夫! | あまりに高価な97,240円の価格! |
ワックスキャンバスの防水性 | ナイロン製に比べてかなり重い |
ブッシュクラフト用の道具を収納 | |
革と真鍮部品を使った無骨なデザイン | |
手作りバックパックの満足感 |
はい、このようにまとめると長所ばかりのようですが、「価格が高い」という短所は4行分にも匹敵する大きさだと思われます。まるでハイブランドのバッグのような価格は、とても万人におすすめできるものではありません。とてもマニアックな製品であることは確かですね。
しかし、ブッシュクラフトを極めたいとする、アウトドアの上級者にはこのバックパックは魅力的に映るはず。森の中の茂みに分け入って、どんな枝に引っ掻かれても切り裂かれる心配がないタフさ。それは、バックパックに積み込んだ道具が命綱となり得るような体験を望む冒険者たちにとって、こんなに頼もしいことはないでしょう。
備えとは、それが必要になったときにはじめて効力を発揮するもの。「高いなあ」「重いなあ」と思って使っているだけで済んでいるうちは、幸運なのかもしれません。「このバックパックがあって助かった」という経験は、このバックパックなしでは助からなかったかもしれないことを意味するのです。
とは言え、私は週末の冒険者です笑 しかもビギナーです。今の私には絶対にオーバースペックですし、もっと私にふさわしいバックパックはいくらでもあるでしょう。どんなに言い訳をしても「カッコいいから使うんだ」ということは、バレバレですよね! 「このバックパックがあって助かった」という日が、いつか私に訪れるのでしょうか。楽しみであり、怖くもありますね。
もうちょっと安価に手に入らない?
しかし、実はこのFrostRiverのバックパックは、もう少し安価に手に入れることができるようです。それは日本の正規取扱店ではなく、アメリカの取扱店から個人輸入するという方法です。これならば日本で購入するより、数万円も安くなるそうです。
安価に手に入れるために、英語を駆使して現地の人とやり取りをするか、アフターサービスも含めて簡単にやり取りができる日本の正規取扱店を選ぶか。ここはそれぞれの価値観で選んでもらうことになりますね。この、アメリカのゴールドラッシュ時代からその精神を受け継いだ、ブッシュクラフト専用バックパック。気になる方は調べてみてください。
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