【徹底解剖】HELLE ディディガルガルの魅力

キャンプの必需品ってなんだろう?」。そんな問いに、かなりの高確率で回答としてあがるのがナイフです。かの名作映画『キャスト・アウェイ』では、名優トム・ハンクス演じる主人公チャック・ノーランドが流れ着いた無人島で、ナイフの代替品を手に入れることで生活水準がグンとあがりましたよね。この映画を未見の方は、チャックが何をナイフの代わりに使ったのか、楽しみにしてご鑑賞ください笑

私が敬愛するキャンプ芸人・ヒロシさんは、ご自身のYouTubeちゃんねる『ヒロシちゃんねるの中で、自分が死んだときに愛用しているナイフを棺に入れてほしい、と述べています。

ナイフは枝を払い、薪を割り、食材を切り、そしてもしかしたら野生動物と遭遇したときには、身を守る武器となるかもしれません。野において住み、温まり、食べ、生き延びる。大袈裟に言えば、生きるための頼みの綱となる道具がナイフなのですね。これは慎重に選びたい道具です。

ナイフという道具への憧れ

誤解を恐れずに言えば、私は子供の頃からナイフという道具に憧れを持っていました。なんと言っても、その鈍く光る刃がカッコいい。子供の頃に夢中になって見ていたアニメやドラマでは、戦う武器としてナイフが出てきます。もちろん自分や他人を傷つける可能性がある、危険な道具という認識はありましたが、その危なさもまた魅力でした。

なのですが、なんと言いますか、「ナイフが好き」っていう発言は、世間的にはばかられる雰囲気がありましたよね。仕事で使うなどで必要に迫られていないのにナイフを所持することは当然法律違反になりますし、ナイフを持ち歩いていることが知人に知れ渡れば、「危ない変わり者」というレッテルが貼られたと思います。子供ながらにそういうことを敏感に感じ取りまして、私はナイフを欲しがったり、所持することはありませんでした。

しかし、キャンプが趣味ならナイフを所持してもいい! だって必要な道具なんですから。私は大人になって、晴れて憧れだったナイフを手に入れる正当な理由を得たのです。これはワクワクが止まりません!

ヒロシさんが使ってるナイフ、カッコいい!

そうです、またもヒロシさんの影響です。私が知らなかったキャンプというジャンルにおいて、『ヒロシちゃんねる』は魅惑のキャンプギアをたくさん見せてくれました。そんな中で、彼が愛用している無骨なナイフは、一際輝いて見えました。それがHELLE(ヘレ)の「ディディガルガル」だったのです。

このナイフは、「いいナイフが欲しい」と常々言っていたヒロシさんの誕生日プレゼントとして、彼が主催するソロキャンプ芸人サークル「焚火会」メンバーがプレゼントしたものだそうです。ヒロシさんはこれをとても喜び、ソロキャンプにおいてブッシュクラフトの工作やバトニング、食材を切ったり、焼いた肉やパンを切ったりと、このナイフを駆使しています。

このナイフを、私もぜひ手に入れたいと思いました。しかし、なんとこのナイフは、入手難易度がかなり高い、超レアアイテムだったのです。

「HELLE(ヘレ)」ってどんなブランド?

出典:UPI

HELLE(ヘレ)」は1932年に創業したノルウェーのナイフ工房。美しい自然に囲まれたホルメダールの街で、親子三代に渡ってナイフを作っているそうです。この創業の地は山やフィヨルド、海岸線といった美しい自然の景観に囲まれていて、HELLEが作るナイフのデザインに大きなインスピレーションを与えています。なので、HELLEのナイフには数十種類もの豊富なラインナップがありますが、どれも無骨で素朴、飾り気のないデザインに、自然から得た素材の美しさが映えているものばかりです。

さらに、多くのナイフメーカーが機械生産に舵を取る中で、頑なに職人による手作りを貫いているのも大きな特徴。伝統に裏打ちされたクラフトマンシップと、妥協のない品質を守り抜き、1本のナイフを作るのに45もの工程が定められているそうです。先に入手困難な超レアアイテムと言いましたが、そもそも大量生産できる製品ではなかったのですね。これは納得です!

「DIDI GALGALU(ディディガルガル」)」ってどんなナイフ?

まだ真新しいディディガルガル。早く使い込んで、味を出したいです。

はい! もうカッコいいことはお分かりですね! これがHELLEの「ディディガルガル」というナイフです。刃の素材にはステンレススチール、そしてハンドルはケボニーを採用しています。この「ケボニー」とは、成長の早い森林から計画的に伐採された針葉樹などのソフトウッドを、細胞組成に働きかけて性質を変化させたもの。ノルウェーの木材会社が持つ特殊な技術で作った加工木材であり、色は茶褐色となって非常に硬く、また耐腐食性も向上しています。まさにナイフのハンドルに最適な素材ですね。ちなみにこのケボニーというハンドル素材は2021年の仕様変更から採用されたもの。それ以前は「アフリカンキアート」という木材が使われており、この旧仕様を探している方も多いとか。生産終了している仕様ですので入手は困難かと思いますが、気になる方は探してみてはいかがでしょうか

この「ディディガルガル」、そのコンセプトは「偉大なる冒険者のために作られたナイフ」というもの。え、これって私のためのナイフ・・・。なんてことは当然のようになくて、南アフリカで、毎年過去20年間に渡ってアフリカ大陸を横断して荒野を探索し、その模様がテレビシリーズとして放映されている冒険者集団「Voetspore」社とのコラボレーションとして開発されました。アフリカ最後の未開の土地と呼ばれる、ケニア北部の砂漠の名をとって名付けられたそうです。もうロマンしか感じられないストーリーですよね!

シースに収めた状態。ハンドルに通したパラコードは後付けです。

その美しさに見惚れるステンレスブレード

ブランド名とモデル名が刻印されるブレード。「Made in Norway」の記載もあります。

手にしてみて思うのは、ほどよく手にズシリと感じる重さと高い剛性感。ブレードは一点の曇りもなく美しく研磨されていて、ブランド名とモデル名が刻まれています。このブレードはスカンジナビア・サンドビックの「12C27」というステンレス鋼が使われていて、これはノルウェーのナイフに多く使われているもの。高純度の鉄鋼で、高い耐摩耗性とエッジの保持力を持っていると言います。

スカンジグラインドは、箱から出してすぐに使える切れ味です。

「ディディガルガル」のブレードは、スカンジグラインドというスタイルを採用。切断やカービング(彫刻)に使える薄さながら、ハードな作業に耐える強度も備えています。中には箱出しでは使えないようなナイフもあるとのことですが、このナイフは箱から出してすぐに鋭い切れ味を発揮します。

キャンプでは薪などの硬いものを多く切ることになるので、自分でナイフを研ぐ技術を身につけたいですよね。切れないナイフは鋭いナイフより危ないと言いますので、きちんとメンテナンスして、長く付き合っていきたいものです。

手にしっくりとなじむハンドル

ケボニー素材に真鍮製のリベットが打ち込まれるハンドル。

ケボニー製のハンドルは、手にしっくりとなじむ絶妙な曲線を描くデザイン。ケボニー素材の特徴である高い密度感と硬い質感は、高い剛性感としてしっかり感じるものの、木のぬくもりによって冷たい肌触りではありません。しっかり握ることができないナイフはとても危ないので、手のひらにピッタリと合う密着感は頼もしい感じがします。またブレードとハンドルを固定するために真鍮製のリベットが2ヶ所打たれているのですが、これもハンドルとの段差を感じないほどなめらかに処理されています。あれです。まるでガンプラの継ぎ目を消してあるみたいな、繊細な仕上げに感動です。

ブレードがハンドルの最後まで伸びたフルタング構造。

ハンドルのお尻まで伸びるブレードの素材を、ケボニー素材で挟み込むフルタング構造。ブレードをハンドルに差し込む構造と違い、ブレードそのものを握ることになるフルタング構造は、ナイフで薪を割るバトニングでは必須とも言える高い強度を持つ構造です。「ディディガルガル」はHELLEのナイフで初めてフルタング構造を採用したシリーズ。「冒険者のためのナイフ」をめざして作られたことがわかります。これはたまりません!

ブレードエンドにはパイプ状のリベットが打たれ、コードを通すことができます。

ハンドルエンドには、パラコードや革紐を通してストラップを取り付けることができるようになっています。しかもただハンドルに穴を開けてあるのではなく、真鍮製のパイプ状リベットが打ち込まれています。これにより、木の穴のザラザラした断面やエッジがストラップにダメージを与えることを防いでくれます。

ナイフのハンドルに付けるストラップは、ナイフが手から飛び出さないための用心。ここでストラップへのダメージを減らすパーツを組み込んでいることは、HELLEの安全性への配慮を感じとることができます。長年、ライターとしていろんな製品を見てきた私にとって、こんな小さな部分も感激するポイントになります笑。

牛革製のシースはしっかりした作り

とても分厚い革で作られたシース。これも使い込んで味を出したい!

「ディディガルガル」は折りたたみのできるフォールディングナイフではないので、持ち運びにはシース、つまり鞘が必要です。このナイフには分厚い牛革で作られた、専用のシースが付属しています。このシースに刻印されるのは、アフリカ大陸。その名前の由来である土地をシンプルにデザインしてあるのも好感が持てますね。とても丈夫に作られているので、ナイフよりも先にへたってしまうことはなさそうです。定期的に保革クリームなどを塗り込んで、メンテナンスしながらエイジングさせていきたくなるシースです。

ベルトループもリベット打ちで頑丈な作りです。

このナイフのシースには、ベルトループが付けられています。ナイフは気づいたら落としていた、では済まされない道具です。しっかりベルトに装着して、常に携帯できるようになっています。また、このベルトループも、分厚い頑丈な革を金属製のリベットで固定してあるので、とてもタフな作りになっています。

ともに冒険を重ねたい相棒、ディディガルガル

筒状のケースに、オリジナルのクロスが付属。パッケージも凝ってますね。

私の理想のキャンプは「自分が気に入ったデザインの道具に囲まれて過ごす」というもの。もちろん、キャンプ道具は安価であるのが正義だとは思います。とても多くの道具が必要になってきますし、ハードな環境で使う以上、消耗品と考えるべきものだからです。でも、私はあえて「安価である」という条件は考えないようにしています。限度はありますが、自分が本当に好きなものを選んでいきたい。このHELLEの「ディディガルガル」は正規販売店の価格で21,450円(税込。2022年4月現在)。価格だけ見ると、決して安くはないですよね。もっと安く、キャンプ用のナイフを手に入れることはいくらでも可能です。でも手にしたときに、きっとわかります。私がなぜこんなに熱を入れて、つらつらと文章を書いているのかが。それほど、このナイフの作り込みに惚れ込んでいますね。まだ3回しか使っていませんし、バトニングにいたっては1度だけ笑 だから今は早く、このナイフを使いこなしたいです。

それに私は「手作り」のアイテムが好きです。もちろん、機械生産されたものを否定するわけではありません。高い品質で大量に生産し、安価で提供することは素晴らしいです。でも私は「手作り」が好きです。材料がいつも同じとは限りませんし、気候や職人さんの体調だって日々違うでしょう。そんなコンディションで、「ん? ちょっと違うな」と、ユーザーには判別できないくらいの微差でさえ、彼らは気にしながら作っているのです。私は仕事柄、いろんな職人さんとお話する機会がありますが、いつも「そこまで気を遣っているんですね!」と驚くことばかりです。そのひと打ちとか、そのひと彫りに作った人の気持ちが込められている気がして、遠くノルウェーから日本にやってきたこのナイフを、たくさん野に連れ出したいと思っています。(手作りしか使わないわけではありませんので念のため笑)。

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