ブナの森の別天地にて、それは見事なソロキャンプ!

私はほとほと参っていました。長野でのキャンプ予行練習から、満を持して挑んだはじめてのソロキャンプ。それは私に、早くもソロキャンプが持つ天国と地獄の要素をまざまざと見せつけてくれたのです。そのときの様子は以下の記事をごらんください。でも、虫嫌いな方は閲覧注意です(グロ画像はありません。撮れませんし)。

結構な時間と予算を使って準備した、新しい趣味ソロキャンプ。「キャンプをはじめてよかった!」という気持ちと「やはりキャンプは無理・・・」という気持ち。このときの私は、この2つの思いの中で揺れ動く乙女のようでした。

心配されたソロキャンプ・セカンドシーズンですが、前回恐ろしい虫たちに襲われて、ホラー映画のような経験をしたからには、勝算なしで実施することはできません。私が一縷の望みを見出したのは、ずばり「冬のキャンプ」です!

そうだ冬キャンプ、しよう!

某鉄道会社の偉大なるスーパーコピーを使ったからには、きちんと説明しなければなりますまい。虫嫌いの私にとってちょうどいいことに、季節はもうじき冬を迎えようとしていました。「そうだ、冬は虫がいないんじゃないか?」と、鬼の居ぬ間にキャンプをしても根本的な解決にはならないことに薄々気づきながら、私は冬のキャンプについて調べはじめました。それは、他の季節とはまったく違う、下手をすれば命を失いかねない過酷なものだったのです。

冬キャンプの特徴春夏秋キャンプの特徴
虫があまり出ない虫がわんさか出る
冬用シュラフが非常に高価シュラフが安価
防寒性のある冬用テントが望ましい夏は通気性が欲しいが特になんでもよい
防寒性の高い服装肌の露出しない服装
暖房器具が必須
結露対策が必要
車は雪道走行に備える

冬のキャンプは他の3シーズンとは決定的に違い、寒さ対策が必要。なにせ山梨県のキャンプ場でも、真冬はマイナス10度くらいにはなります。これはなめていたらヤバい低温。これを克服するための装備が必要なんですが、これがまた高価なんですね。冬用のダウンシュラフなどは、7万円もしたりします。暖房器具は石油ストーブ薪ストーブなどがありますが、これらも3万円以上とかなり値が張ります。ここでこのデカめの出費は、私にとってタイミング的に辛い。なぜなら、前回の虫軍団のボスとの対決で心が折れかけており、今後キャンプを続けていけるのかが不透明だったからです。ハッキリ言って、やめるかもしれない趣味にかけるには、大きすぎるコストです。

しかも前回のキャンプの反省から、私はテントを買い替える必要性を感じていました。「BUNDOK・ソロティピー1TC」はとてもカッコいいテントなのですが、私には上級者用であるように感じられました。やはり「虫に襲われたときに逃げ込む安全地帯」として使うためには、ドーム型テントの方がいいと思ったのです。

しばしの長考に入った私。くだした結論は「これでダメならキャンプをやめる」ことを前提とした冬キャンプ挑戦でした。最大の障壁と思われる虫がいないキャンプで、虫を克服する決意ができるほど楽しめるのかどうか。これに賭けようと考えたのです。キャンプを続けるかどうか判断するための、ひょっとしたら最後になるかもしれない挑戦です。

ダウンシュラフと化繊シュラフの違いとは?

そうと決めたからには冬キャンプ用の準備をしなければなりません。とりあえず次のキャンプは11月中旬を予定していましたので、真冬というよりは冬の入り口。この時期ならば、気温マイナス3度くらいを想定しておけば大丈夫そうです。そこで私は性能のよい冬用シュラフを購入しようと思いました。

冬用のシュラフには大きくわけて、2つの選択肢があります。それはダウンシュラフ化繊シュラフ。ダウンシュラフはわれわれが普段着用しているダウンジャケットと同じく、断熱材として水鳥の羽毛であるダウンが封入されています。これが外気と体温の間に空気の層をつくり、体温が逃げるのを防ぎます。とても温かいのは周知の通りですが、希少価値の高い天然素材を使っていますので、とても高価です。

化繊シュラフはその名の通り「化学繊維」をダウンの代わりに封入したシュラフです。人間の叡智によって水鳥の羽毛に迫る断熱効果を持つ素材を開発して使っています。化繊は量産が可能なのでダウンシュラフよりも遥かに安価です。またダウンシュラフは水に濡れてしまうと断熱・保温効果が著しく落ちてしまいますが、化繊なら大丈夫。自宅の洗濯機で洗うことだってできます。ここまで書くと化繊シュラフの方が断然優れているように感じますが、化繊シュラフには「重い」という最大の欠点があります。とてもかさばりますし持ち運びが大変です。

ダウンシュラフの特徴化繊シュラフの特徴
とても軽いそこそこ重い
小さく折りたためる折りたたむとかさばる
水に弱い(要シュラフカバー)水に強い
自宅で洗濯が難しい自宅で洗濯できる
とても高価ダウンシュラフの半額程度

冬用シュラフを選ぶにあたってよく聞かれる言葉が「冬用シュラフはケチるな!」というものです。夜寒くて寝られないのは苦しいことですし、何より自分の命を守るための装備をケチって事故が起きてしまっては意味がありません。色々と調べましたが、相談されれば少しでも安全なものをおすすめするのが人間のサガというもので、ダウンシュラフをすすめる方が多いですね。ダウンなら比較的軽くて小さくパッキングできますので、「シュラフ持っていくのどうしようかな」と迷ったときも、「持っていく」という判断になりやすいのもメリットだと思います。私は「持ってこなかった!」という致命的な失敗を避けるためにも、携帯性の高いダウンシュラフを選ぶことにしました

私が選んだのは「ナンガ800DXロング」という、日本製のダウンシュラフ。これについてはまた、別の記事で紹介したいと思います。

キャンプ場選び、今回のテーマは「川沿い」!

さて、冬キャンプの装備もぼちぼち揃い出したところで、キャンプ場を探します。前回と前々回は林間サイトでした。今回はちょっと趣向を変えて、「川の流れる音を聞きながら」キャンプがしたいと思います。

最後(?)にふさわしいキャンプ場の条件
  • 予約ができること
  • 完ソロに近いとありがたい
  • 川の近くにあるサイト
  • 標高が高くて虫が少ないところ
  • 今回は山梨県に行ってみたい

どうでしょう。この前回のキャンプが酷いトラウマになっていそうな条件。「最後」なんてわざわざ付けているあたり、かなり弱気になっていることがわかりますね。

11月中旬なので、季節はまだ秋です。でも冬キャンプの雰囲気を味わいたいので、季節が早く進んでいるであろう標高の高い地域、そしてキャンプのメッカでもある山梨県に照準を合わせます。そこで前回もお世話になったLINEのソロキャンプコミュニティで教えてもらったのが「城ヶ尾 ブナの森キャンプ&コテージ」さんです。

出典:城ヶ尾 ブナの森キャンプ&コテージ

城ヶ尾 ブナの森キャンプ&コテージ」は、キャンプ場がたくさん集まっていることで有名な、山梨県南都留郡の道志村にあるキャンプ場。キャンプサイトは4ヶ所と少ないのですが、敷地内に4つのログハウスがあり、ソロキャンパーはもちろん、グループキャンプやファミリーキャンプでも楽しめます。

オーナーさんが手作りで開拓したキャンプ場で、リピーターの多さにキャンパーたちの高い満足度がうかがえます。施設内を川が流れており、7月下旬から8月上旬にかけてはホタルが飛ぶこともあるとか。問題は予約が取れるかどうかでしたが、運がいいことに、今回も私と他にもう1組のお客さんがいるだけという、最高のタイミングで予約を取ることができました。

「城ヶ尾 ブナの森キャンプ&コテージ」にやってきました!

ついに、最後の冒険に向かって出発した私。いえ、大袈裟ですね。最後になるかもしれない旅へのスタートです。「城ヶ尾 ブナの森キャンプ&コテージ」までは私の自宅から2時間ちょっと。高速道路を相模原ICで降りて、今回も愛車パジェロミニさんでぐんぐん道を突き進んでいきます、前回はこの相棒に命を救われました(大袈裟)が、今回もこの車に逃げ込むようなことがあるのでしょうか。不安です。

今回もかなり長い林道を進むことになりました。四駆で走る林道は楽しいです。

当日、私が到着する時間帯は、オーナーさんは所用で留守とのこと。林道を進んでいくと鍵のかかった大きなゲートに道を阻まれますが、鍵のロックナンバーを教えてもらっていたので、自分で開けて進みます。もちろん、通ったあとはちゃんと閉めておきましたよ!

無事キャンプ場に着きましたが、聞いていた通りの無人状態。どのサイトでも使っていい、と言われていたので、しっかり川沿いの一番よいサイトに陣取らせていただきました。

川のせせらぎ以外は何も聞こえない、まさに別天地のキャンプ場です。

車をサイトのすぐ隣に停め、さっそく川を見にいきます。これがびっくりするほど透き通った綺麗な水! ホタルは水が綺麗なところに住むと聞きますが、これなら夏にホタルがやってくるのも納得です。

とても美しく澄み切った川の流れ。これは見ていて飽きませんね。

この近所には滝もあって、澄み切った川の流れとともにゆらめく水の美しさを存分に堪能できます。その景色を含めた今回のキャンプの様子は、YouTubeチャンネル『週末のインディアナ』にアップしています。興味がある方はぜひご覧になってください。

「城ヶ尾 ブナの森キャンプ&コテージ」でのキャンプの様子を動画で公開しています。

ひとしきり水をうっとり眺めたあと、早速テントの設営にかかります。今日持ってきたのは前回まで使っていたBUNDOK「ソロティピー1TC」ではありません。初心者用として、さらには虫に襲われたときに逃げ込む安全地帯として、新しくドーム式テントを購入しました。それがこのColeman「ツーリングドームST」です。

設営は事前にYouTube動画で予習済みのColeman「ツーリングドームST」。別売りのキャノピーポールも購入しました。

1〜2人用というだけあって、ソロキャンプなら十分すぎるサイズのColeman「ツーリングドームST」。設営はとても簡単ですし、広めの前室はたっぷり荷物が置けます。このテントに関しても、またいずれ詳しくレビューさせていただきます。

今回、藁にもすがる思いで持ってきた「おにやんま君」。テントの守り神として降臨です。

テントを設営しながら、なにやらビクビクしている私。そうです、前回のキャンプでは、まるで戦闘機のようにかっ飛んできたスズメバチや、夜中に大挙して攻めてくるザトウムシの大群に襲われました。今回は新たな虫対策として、前回までの装備に加えて秘密兵器を持ってきました。それがこの「おにやんま君」なのです!

「おにやんま君」は山口県にある釣具メーカー「サンライン」が作った、トンボのオニヤンマにそっくりなフィギュア。実はオニヤンマは、山に棲む虫たちにとっては天敵であり、彼らを捕食する存在なのです。ですので、山の虫がこの「おにやんま君」を見れば、彼らは恐ろしさのあまり逃げ出すでしょう、というシロモノ。安全ピンでテントや帽子、リュックなどに取り付けることができます。

実際に使った人のレビューをネットで探すと、効果があったという人とないという人が混在。でも、この仕組みは大いに納得できるものがあったので、私はアウトドアショップのレジ横にあったコレを即買いして持ってきたのです。テントのキャノピーポールの先端に、高く掲げた「おにやんま君」。今回、私が実際に経験したことを、ありのままにお伝えします。このキャンプで私は、ほとんど虫に出会いませんでした!

11月中旬の山梨県。標高約920mの高地にあり、最低気温は0度くらいまで下がります。季節的にもうこの近辺には虫はいなかったのだ、と言えばそれまでかもしれませんが、私はとりあえずこの「おにやんま君」を信じることにします。「おにやんまさん」と呼んでもいいくらいです。本当にありがとう!

ちなみに、日本ならどこにでも棲息するというあの凶悪なザトウムシですが、テントの設営が終わってトイレにいった帰りのこと。こんもり積もった落ち葉の上を歩く奴を、たった1匹見かけました。我ながらよく見つけたものだと思いますが、また夜に襲ってくるのかと思いきや、それ以降まったく見ることはありませんでした。あの恐怖の体験以降「ザトウムシアイ」という特殊能力(何それ)を手に入れた私が見つけられなかったのですから、実際に寄ってこなかったのだと思います。これも「おにやんま先生」のおかげなのでしょうか笑

虫がいないキャンプならではの余裕。薪割りをしながらコーヒーを飲みました。

虫がいないのなら、もう楽しみしかありません。3度目ということですっかり慣れた薪割りをしながら、Esbit「ポケットストーブ」で湯を沸かしてコーヒーを飲みました。カップは「ジェントルマン ハードウェア」の琺瑯マグカップ。もちろん敬愛するキャンプ芸人ヒロシさんの真似です笑

今回は焚き火の準備も抜かりなく

過去2回のキャンプでは、焚き火を起こすのに手間取りました。中途半端に上級者のやり方を真似たからであると自己分析し、初心者なのですから今回はしっかり準備しました。薪に火がつかないと、キャンプの楽しみの8割くらいが損なわれる気がしますからね。

ピコグリルの中央に置いた「文化たきつけ」。無骨なキャンプをする方たちもギリギリ許す着火剤だそうです。

文化たきつけ」は北海道の「マルミ富士屋商店」が製造している、昔ながらの着火剤。木材の繊維を固めたものに灯油を染み込ませたもので、焚き火はもちろん、薪よりも火がつきにくい炭まで着火できる優れものです。切り込みが入っているので、使いたい大きさにちぎって使うことができます。

SOTO「スライドガストーチ」は火口を伸ばして着火できるガストーチ。ガスの充填も簡単です。

どうでしょう、この進歩。「文化たきつけ」に加えてSOTO「スライドガストーチ」まで準備してきました。火口を伸ばせば燃やすものまで距離ができて、「文化たきつけ」が勢いよく燃え上がっても怖くありません。前回まで使っていたジッポーライターは風が吹くと消えてしまい、またオイルの減りも早かったのでこちらにスイッチしました。ジッポーの方がカッコいいんですけどね・・・。SOTO「スライドガストーチ」はガスのCB缶(カセットコンロで使うアレ)から簡単に充填できるのも便利です。

燃え上がる「文化たきつけ」。この火力があれば焚き火のたきつけも余裕です。

着火した「文化たきつけ」は勢いよく炎をあげ、少しの間燃え続けるので薪を燃やすのも簡単です。着火剤を使わない無骨な焚き付けも憧れますが、まずは火の性質をちゃんと理解するために手堅い方法で焚き火をしましょう。うーん、大人です笑

優雅にすごす、焚き火との時間

「同じ焚き火はない」とは、かのキャンプ名人のお言葉。この日の焚き火は、パチパチと爆ぜる音が心地よい。

すぐ横には気持ちのいいせせらぎを奏でてくれる川が流れ、目の前ではパチパチとよく爆ぜる薪が燃える。火の粉が多く飛びそうだったので、テント周りの枯葉もさらに広く避けました。これで3回目の焚き火ですが、こんなにスムーズにできたのははじめてです。お腹も減ってきたので、さっそく用意してきた肉を焼くことにします。

前回の豚バラ肉がとても美味しかったので、今回もおかわりです。

スーパーで買ってきた、いたって普通の豚バラ肉。これを焚き火で焼くことで、余分な脂が落ちて、カリッとジューシーな焼き上がり。これに私が自宅でも愛用している「ろく助の塩」だけをふりかけて食べます。まるで舌を焼くように熱い肉をホフホフと頬張り、その後から豚の焼けた脂の美味しさと「ろく助の塩」のコクのある塩味が追いかけてくる。何度か咀嚼したところに、よく冷えたビールを流し込むと、昇天しそうな旨さです。とてもありふれた食材が、これを焼くまでの過程と、自然の真っ只中にいる環境によって、ここまで味わいが変わるという発見。キャンプをはじめなければ知らなかった喜びですね。

スノーピークの「アルミパーソナルクッカーセット」も今回が初おろしです。

夜もふけて、あたりはかなり寒くなってきました。体を温めるために、スノーピーク「アルミパーソナルクッカーセット」の鍋を使って、用意してきたワンタン鍋を作ります。醤油味のスープに、ワンタンと白菜、エノキダケを入れただけの超シンプル鍋。これも、どこのお店の絶品鍋なんだというくらい美味しかったです。人間は、舌だけで味わう生き物ではないんですね

じつに見事なソロキャンプを終えて

人里離れた山奥で、川のせせらぎを聞きながら降ってくる落ち葉を眺め、焚き火をしてキャンプめしを食らう。お腹がいっぱいになったので、ビールをちびちび飲みながら、残りの薪を焚き火にくべながらのチルタイム。まさに、見事なまでの完璧なキャンプでした。「えっ、普通のキャンプすぎない?」と言われるかもしれませんが、これがしたくて私はキャンプをはじめたのです。このごく普通のキャンプをするまでに、結構遠回りもしましたね笑 でも近道なんてつまらないです

昔、コピーライターをはじめたときに、効率のよい仕事ばかり考えていた私。一見無駄なことばかりする上司に、楯突いたことがありました。「近道なんてつまらないよ」と上司は言いましたが、そのときの私は理解できませんでした。今はあのときの上司の言葉が理解できます。当時の私には、少しレベルが高い考え方だったんだな、と。そんなことを思い出して、炎を眺めていました。

いつも街で履いていたアイリッシュセッター。やっと山に連れてこれました。

予行練習を入れれば3回目、ソロキャンプは2回目。今回、やっと心から「キャンプって楽しい!」と言える時間を過ごすことができました。もちろん、私にとっての障壁はまだ解消されていません。「じゃあ、冬だけキャンプするの?」ということになってしまうからです。私はできれば、すべての季節でキャンプがしたい。そのためにどうするのか。まだまだ考える日々は続きそうです。とりあえず、今回が最後のキャンプでないことだけは確かなようです。

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